研究紹介
ペプチド核酸(PNA)による遺伝子制御
第2話「グアニンのメチル化によるカチオン性グアニン導入PNA(masaPNA)」
ルテニウム錯体導入によるPNA/DNA相互作用の強化により、PNAのinvasion効率の向上に成功したが(第1話: ルテニウム錯体連結によるPNAのinvasion効率向上)、これとは別に、PNA/PNA相互作用を弱めることで、DNAへのPNAのインベージョン効率を向上させる試みも行っている。DNAとは異なり、PNAの骨格は負電荷を持たず、DNA/DNA間の負電荷による静電反発が発生しないため、DNA/DNAよりもPNA/DNAの方が強く相互作用可能である。その一方で、PNA/PNA間の相互作用の方がさらに強力であり、PNAのDNAへのinvasionの大きな妨げとなる。
そこで天然の核酸塩基の1つであるグアニン(G)に1ステップの化学反応でメチル化したカチオン性グアニン(G+)を開発した。相補的な2本のPNAの両方にG+を導入すると(methyl-adducted self-avoiding PNA (masaPNA)と命名 by日比野柾博士 (2019年度博士卒))、PNA/PNA間ではG+による静電反発による不安定化が生じる一方で、DNAとのインベージョン時にはDNAの負電荷とPNAのG+が静電的に引き合うことでPNA/DNA相互作用も強化することに成功し、PNAによるinvasion効率の大幅な向上に成功した。
詳しくはこちらの論文をご参照下さい。
- M. Hibino, Y. Aiba, O. Shoji "Cationic Guanine: Positively Charged Nucleobase with Improved DNA Affinity Inhibits Self-Duplex Formation" , Chem. Commun., 46, 2546-2549(2020).
https://doi.org/10.1039/D0CC00169D