研究紹介
ペプチド核酸(PNA)による遺伝子制御
第3話「核移行シグナルペプチド(NLS)連結によるPNAのinvasion効率向上」
これまでにカチオン性のルテニウム錯体の導入や(第1話: ルテニウム錯体連結によるPNAのinvasion効率向上)、グアニン塩基のメチル化によるPNAへのカチオン性付与により(第2話: グアニンのメチル化によるカチオン性グアニン導入PNA(masaPNA))、PNA/DNA間の静電相互作用に基づくinvasion効率の向上に成功したが、より簡便なinvasion効率向上の手法として、核移行シグナルペプチド(nuclear localization signal, NLS)を連結したPNAを詳細に検討した。
NLSはLysやArgなどのカチオン性のアミノ酸で構成された短鎖ペプチドであり、生体内においては核局在の機能を有するペプチド配列である。PNAはペプチド様骨格を有するため、一般的なペプチド固相合成で合成が可能という特徴を有する。そのため、ペプチド結合によって容易にNLSとPNAは連結可能である。NLS連結PNAはNLSの正電荷とDNAの負電荷の間の静電相互作用によって、PNAのinvasion複合体の安定化が可能であった。また興味深いことに、ポリリシンの様な単純なカチオン性アミノ酸の繰り返し配列を導入したPNAではDNAへの非特異的な結合も強化されてしまうのに対し、NLS連結PNAは配列特異性を維持しながら、安定なinvasion複合体の形成が可能であり、生物進化の過程で選抜されてきたNLSがDNAとの相互作用に適した構造、物性を有している可能性がある。
詳しくはこちらの論文をご参照下さい。
- Y. Aiba, G. Urbina, M. Shibata, O. Shoji "Investigation of the Characteristics of NLS-PNA: Influence of NLS Location on Invasion Efficiency" , Appl. Sci., 10, (2020) 8663.
https://doi.org/10.3390/app10238663